2012年1月10日火曜日

その、何でもない風景を……

シャッターまでも閉じきった、暖房をガンガンに効かせた部屋などで、毛布にくるまりながら、
濃いアールグレイのミルクティを頂きつつ原稿を書いていると、厭でも体調が悪くなります。
僕の部屋にはカーテンがない変わりに、大きな窓全てにシャターがあります。
昼夜を問わず締め切っている僕の部屋は、季節を感じることなく、まるで地下室のように孤独で、
おまけに照明器具を淡い光に変えたせいもあり、部屋の中はいつでも夕方のような有様なのです。

最近、新しい企画を立てています。
これまでの経験から、何かを始める前には、ある程度のストックが必要だな、と感じ、
本日も原稿をカタカタと、この年中夕方部屋で執筆していたのですが、暖か過ぎる部屋の中、
パソコンにへばりついていたせいか、頭がひどく痛いのです。
もともとの偏頭痛も相まって、気力が一気に低下します。

そんな時、僕は自転車に乗ることにしています。
外の風にあたって、リフレッシュしようという魂胆なのです。
遠くまで行くことが目的ではないので、いつも通りのお散歩でも良いのだけれど、
たまに自転車に乗らないと、タイヤの圧がおかしくなってしまうので乗ることにしています。

時刻は深夜1時過ぎ。この寒空の下、また飽きもせず上一色のお散策にお出かけします。
持ち物は煙草とデジカメだけ。
目的なき散歩は、なるだけ手ぶらの方が良いのです。
ヨットパーカーの上に革ジャンとネックウォ-マー。
耳当て代わりのヘッドフォンをつけて出発します。

冬の運動(果たしてコレが運動と言えるのかどうか)の際でも、
きちんと水分を補給する必要があります。
いつか何処かで聞いたのですが、冬は夏に比べて、体の温度調節に体力を奪われるので、
こまめに水分をとった方が良いそうです。
ちなみにダイエットもをする際も、カロリー消費が冬の方が良いそうです。
検証とかはしていないのですが。

周囲の音が聞こえる程の、ボリュームを絞ったプレイヤーでサティのピアノなどを聞きながら
自転車を漕いでいると、いつもの見慣れた江戸川の風景も、なんだか幻想的な雰囲気になります。
小心者の気質上、民家など、人の居ない路をたんたんと走るせいもあって、サイクリング中、
誰にも出会うことはありません。

漕ぎ始め、僕は様々なことを考えます。勿論多くの場合、執筆中の作品の構想を練るのですが、
自転車に乗ると、途中から何を考えているのか分からなくなります。
ただ真っ直ぐ真っ直ぐ路を走ると、頭の中がどんどん真っ白になります。
今が冬で、思考が〝寒い〟で埋まっているのかもしれません。
だから途中からは、少しでも面白そうな風景を探して漕ぐことになります。
たかが江戸川、たかが家の近所であっても、
深夜のサイクリング中はアドレナリンが出ているせいか、ひどく興味深く感じてしまいます。
そして面白いものが見つかったなら、適当にダイヤルを合わせてシャッターを切るのですが、
アパートに帰ってからじっくりその写真を見てみると、
「果たして、この風景の何処に惹かれたのかしらん」ということになります。
まあ、でも、それで良いのです。もとより気分転換が目的なのですから。

夜のサイクリング中、気を付けなければならないことがあるとすれば、それは方角です。
女子脳の僕は、比較的路に迷いやすく、また、同じような風景が広がるこの街、
音楽などを適当に流しているせいもあって、今果たして何処にいるのか? と、
途中から訳がわからなくなります。
こんな時、携帯電話のマップ機能を使えば良いのでしょうが、地図を見るのが苦手な僕は、
かえって混乱してしまうのです。
だから、たいていの場合、大きな路を中心にして走る為、
いつまで経っても行動範囲が広がりません。
しかし、それでも尚、やはり自転車を漕ぐのは気持ちの良いことなのです。
途中の自販機で缶コーヒーなどを買い、小さな公園で煙草を飲みながら、孤独ごっこで遊びます。
(本当に、一人暮らしが長引けば、驚く程時間潰しの達人になれます)

危ないので、スピードを出して走ることはしないのですが、それでも手がかじかんで来ます。
僕の持ってる自転車用の手袋は、夏にこしらえた物なので、ご丁寧に指先がありません。
1時間も漕いでると、手が痛くなってしまうのです。
そして、足さえもかじかんで来たのなら、サイクリングの終わり時です。
暖かい湯船に浸かる空想をしながら、またもゆっくり引き返します。
ちなみに夏の時などは、ペットボトルが空になったら帰ります。

アパートに戻り、湯船に浸かり、ビールでも飲みながら寝る支度をし、
撮って来た写真などを眺めてみるのですが、
やはり、全く持っておもしろみのない写真に仕上がりました。
こうして、僕の貧弱なノートパソコンのデータに、用途不明のデーターが蓄積されて行くのです。


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